ESCO事業とは?

2022年8月23日

日々の暮らしや経営活動では様々なエネルギーが使われていますが、ビルや工場では省エネルギー化の意識が高まっています。

省エネルギーにすることで企業にかかる膨大なコストをカットすると同時に、環境の保全の貢献にもつながることから、省エネルギーサービスを求める企業やビルオーナーが増えているようです。その省エネルギーサービスを包括的に提供するビジネスとして、ESCO事業が注目されています。

ESCO事業の概要

ESCO事業は、1996年に資源エネルギー庁の委託受けて委員会が設置されました。そこから1997~1998年にかけて省エネルギーセンターから大々的な調査依頼を引き受けたことをきっかけにESCO事業が本格的に始動します。さらに、1997年に京都議定書が採択されたことも導入のきっかけとなるでしょう。

1999年にはESCO推進協議会が設立し、当初は電力やガス、電機メーカーなどの大手企業16社を中心に活動がスタートしました。そこから省エネの機運が高まって各市場から注目されるようになり、エスコシステムズなど、現在141社もの企業が事業に参加しています。

ESCO事業は、オフィスビルのオーナーや工場施設に対して、エネルギー削減のために投資を行い削減実績の一部を報酬として受け取る事業です。提供されるサービスは8つの組み合わせで構成されています。

  • エネルギー診断に基づき省エネルギーを提案
  • 提案を実現するために省エネルギーの設計と施工
  • 導入した設備の保守
  • エネルギー供給に関するサービス提供
  • 事業資金を整える
  • 省エネルギーの効果保証・省エネルギーの効果計測と徹底検証
  • 計測と検証に基づいて改善策の提案

このように、省エネルギーの診断から設計と施工、運転や維持管理、資金調達まで全て一元化して提供しています。また、ESCO事業の特徴は省エネルギー効果の保証を含んだパフォーマンス契約をとることで、顧客の利益を向上させることが可能です。

エスコシステムズを例に、ESCO事業の特徴とメリット

ここでは、ESCO事業を行っているエスコシステムズを例に具体的な特徴やメリットを見ていきましょう。

新しい費用負担が発生しない

省エネルギー改修の資金はESCO事業が提供するため、設備投資に関する負担が発生しません。契約期間中は削減実績を報酬として渡すので無償や安価ではありませんが、契約終了後の削減分は顧客の利益になることがメリットでしょう。

効果が保証されている

省エネルギーの提案から改善までが事業内容ですが、提案どおりの効果が発揮されない場合はESCO事業が補填するパフォーマンス契約をとっています。効果が保証されているので、もしもの場合も安心して導入できます。

パフォーマンス契約の種類

パフォーマンス契約には2種類あるので、契約の際は注意が必要です。

ギャランティード・セイビングス契約

この契約は資金調達を顧客側が負うことになりますが、ESCO事業が改修の節減額保証と利益補償を行うので、経済的な負担は強いられません。また、一定額をESCO事業に支払い、企画以上の利益であれば原則顧客が受け取る仕組みとなっています。

シェアド・セイビングス契約

この契約はESCO事業が金融機関と契約して資金調達し、顧客は金融負担がかからない契約です。ただし、パフォーマンス補償は修繕前と比較して、増大しない範囲に限定されています。
また、ESCO事業への支払いは原則、節減額の一定割合となっています。

通常の省エネルギー改修は設計、工事、運転は個別契約となるため、効果に対する保証や確認がありません。一方、ESCO事業は効果の保証と確認を含め、診断や改修、運用管理を行うので、安心して導入することができます。ESCO事業は様々な企業が展開しており、今後も各企業や工場の省エネルギー化に貢献していくことでしょう。

ESCO事業は様々な企業が展開しており、今後も各企業や工場の省エネルギー化に貢献していくことでしょう。日本のESCO事業はまだ歴史が浅いことから海外進出するまでに至っていませんが、現在世界各国と競り合うくらいの競争力をつけている段階です。もともと活発な活動を続けてきたアメリカから導入された事業なので、今後の省エネの余地はかなり期待できることでしょう。日本のESCO事業をよく理解していない方のために、「ESCO事業の動向」についてご紹介していきます。

ESCO事業導入の流れ

  1. 対象施設を選択する
  2. ウォークスル―調査を受ける
  3. 予備的プロプロボーザルを確認する
  4. 詳細エネルギー診断を受ける
  5. 包括的改修計画書を確認する
  6. プロジェクト契約の締結
  7. ESCO事業の施行管理開始
  8. 計測・検証、運転管理、保守・点検
  9. 契約期間が終わり次第ESCO事業完了

ESCO事業を導入するかどうかはまず、省エネルギー診断を受けてエネルギーの使用量や管理状況を把握した上で検討することをおすすめします。調査時間は1日あれば終わるので、対象となる施設にESCO事業が必要かどうか診断してもらうようにしましょう。

ESCO事業の市場動向について

ESCO推進協議会の調べによると、ESCO事業の実績は産業・業務共に成果が見られているとの見解があります。2003年にピークを迎えその翌年は産業部門において著しく低下しましたが、原油価格の高騰で新しいエネルギー供給システムに不具合が生じたことが一時的に影響していたようです。市場は長期契約が中心になるので、優良企業や公的機関がプレイヤーの基盤となるでしょう。市場開発は数年で500億~1000億円の規模に発展していくものと政府は大きな期待を寄せています。

ESCO事業の今後の課題は、認知度をできるだけ広めることです。ビルの管理部門担当者の許可が下りなければ、省エネファイナンスの事業は始動できません。